好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
「ちょっとこっちおいで」



そう言って風里先輩があたしの腕を引いて物陰に隠れた。



「穂高、人来ないか見張っててね」

「わかった」



風里先輩が、あたしの浴衣を慣れた手つきで直してくれる…。



できるだけあたしに触れないようにしてくれてるのが分かる。



どうしよう…ドキドキが止まらないんですけど…。



「ん、できた」

「ありがとうございます…」

「せっかく着てきたから綺麗にしてたいよねえ?」



風里先輩はにっこりと笑ってあたしの頭にぽん、と手を乗せた。



やばい…。



めっちゃ顔赤いかも…。



「なんで慣れてる…んですか?」

「ん~、浴衣とか興味あって、昔の彼女に着付けの練習させてもらってたりしてたんだよね」



昔の彼女…。



どんな人なんだろう…。



胸がちょっときゅっとなる。



あたしの知らない先輩を知ってる女の人がいるんだなあ…。



うらやましいな…。



「そういえば風里先輩って今は彼女とかって…いるんですか?」

「今はいないかな」



そっか…。



ちょっとほっとするあたし。



脈はないけど…。



彼女がいないだけまだマシかな?



「2人ともお待たせー」

「おおー、綺麗に直ってんね。さすが」

「まあね」



それからまた4人で歩き始めた。



風里先輩に裾はまだ持たせてもらってて…。



こんなにドキドキさせられっぱなしで、あたしどうしよう…。



これ以上好きが止まらなくなったら死んじゃうかも…。
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