好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
「いいのか?」

「いや…普通に無理でしょ…」

「まあそうだよな…」



どうしよう…。



小糸ちゃんのこと、不安にさせたくない…。



受験勉強も一生懸命頑張ってるところで。



余計な心配、今さら俺がかけるわけにいかないよ…。



小糸ちゃんにはどうしても言い出すことができなかった。



このままもう会わず何もなかったことにしたい…。



小糸ちゃんに言わないことへの葛藤と戦って。



でもやっぱり言うべきじゃないと、俺はそう思っていた。



だけど、一度会うと不思議とその後も会うもので…。



「風里」

「綾乃…」

「隣、いい?」



学食でまた会った俺の、空いてる隣に座る綾乃。



「ちょっと…」

「いいじゃん、何するでもないし…。あたしはまた会えて嬉しかったよ。同じ大学なのも嬉しかった。話、聞かせてよ」

「そんなこと言われても…」



綾乃とする話なんてない…。



こっちは今すぐ関わりを絶ちたいのに…。



隣の直くんたちが心配そうに見てくる。



目の前の親子丼はまだ食べ始めたばかりで、他に空いてる席もない。



綾乃は一人で話し始めた。



俺はデザイン系の学科だけど、綾乃は油絵らしく。



今は4年生で卒業制作のために学校に通ってるらしい。



「今の彼女とは長いの?」

「…2年くらいかな」

「そう…結構長いんだね…」



思えば誰よりも長く付き合ってる。



毎日小糸ちゃんのことだけを考えて、これからもそれは変わらない。



こんなに人のことを大事に思って、こんなに深く好きになったのは小糸ちゃんが初めてだ。



だからこそ、そんな小糸ちゃんを守りたくて、不安にさせたくない。



綾乃としゃべってる場合じゃないんだよ、俺は…。
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