好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
「お姉さんは、どうしてそんな風里と話したいんですか?」



加奈乃ちゃんが綾乃に聞いた。



綾乃がにっこりと笑う。



「だって久しぶりに会って嬉しかったから。今どうしてるかとかも気になるでしょ?」



そんなの気になんないでよ…。



「綾乃…ごめん、俺、本当に彼女のこと不安にさせたくないの。同じ大学って知るだけでも相当嫌だと思うし。関わらないでほしい…」



俺がそう言うと、うつむいて涙目になった。



ぎょっとする俺。



ちょっとちょっと…。



何その反応…。



困る…。



俺はそうそうにご飯を食べ終えて、直くんたちに謝ってから席を立った。



これ以上ここにいられないよ…。



でも、席をあとにしようとしたとき、綾乃に腕を掴まれた。



「風里…。あたしを拒絶しないで…? 風里を困らせたくないって思ってるけど。そんなに突き放されるとつらいよ…」



俺だって突き放すの、若干の後ろめたさはあるよ。



でもそれ以上に小糸ちゃんが大事だよ。



特に、こんなに縋られたら…。



綾乃の腕をそっと外した。



「じゃあね…」



そう言ってその場を離れた。



直くん、加奈乃ちゃん、ごめん!



多分めっちゃ気まずいよね…。



でもそんなことより…。



あんな風に言われて、あんな反応されて、綾乃は俺のことどう思ってるの?



やっぱり俺に未練があるんだろうか…。



そんなんじゃますます小糸ちゃんに言い出せないよ…。



この前、綾乃っぽい人が学校にいたと話したときの小糸ちゃんを思い出す。



あんな風に嫌な気持ちにさせて、不安にさせて。



俺、どうしたらいい…?



隠している自分への嫌悪と、それを言って楽になるのは自分だけじゃないかという葛藤。



どうしても答えは出せなかった。
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