好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
そんなある日のことだった。



朝からの授業を直くんと加奈乃ちゃんがサボり、一人で授業を受けてた俺。



あの2人はサボって何してるんですかねえ…。



なんで俺が代返なんてしてあげないといけないんだ…。



一人で学食に向かう道中で、また綾乃に遭遇した。



『げっ』というのが顔に出てたと思う。



そんな俺に綾乃は苦笑して。



「風里とゆっくり話したいんだけど…」



まだそれを言うの…。



散々冷たくしたじゃん…。



「お願い。最後にするから!」



そう言われて、『最後』という言葉を信じ、腕を引っ張られて人気のないところに連れてこられた。



「風里ってあたしのこと…ちっとも考えてないんだね」

「…そりゃそうでしょ」

「もっと優しかったじゃん…」

「それは…一応は好きだったからだよ。今は全然状況が違うじゃん…」



俺が言うと綾乃はうつむいた。



涙をこらえてるのが分かる…。



「京都で風里と再会してから…あたし、風里のことばっかり考えてた」

「…」

「風里への気持ちがまた蘇ってきたのがはっきりわかったの」

「そんなの…俺には関係ないよ」

「風里は別れてから一度もあたしのこと思い出さなかったの? あたしはしばらく引きずってた」

「思い出さないわけじゃなかったけど…。それは未練というよりも思い出としてだった」



綾乃が一歩俺に近づいた。



俺の手を取ろうとしたので、俺は手を後ろに隠す。



綾乃は切なそうに笑った。
< 305 / 351 >

この作品をシェア

pagetop