好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
「あたし…やっぱり風里のことが好きだよ。封じ込めてた思いがもう全部あふれ切った。浮気でもいい。風里のそばに置いて…?」



綾乃がそう言って、俺のことを突然抱きしめた。



いきなりのことでフリーズする俺。



でもすぐに我に返って、それを突き放す。



「綾乃。今のはさすがにない。浮気でもいいとかも撤回して。俺の彼女侮辱したら許さない」



そう言って綾乃に背を向けた。



「待って! 風里!」



後ろから聞こえるけど、俺は気にせず歩き続ける。



でもそんなこと俺にはどうでもよくて。



小糸ちゃん…ごめん。



俺、小糸ちゃんのこと裏切ったかも…。



のうのうと抱きしめられて。



あり得ないよね…。



さすがに…これは小糸ちゃんに言わないわけにはいかない。



いや、でも…。



加奈乃ちゃんの言葉を思い出す。



『最後まで隠しきってほしい』



俺に、最後まで隠しきるなんてことできるんだろうか…。



小糸ちゃんのためを思って、何を選択するのが一番良いのか、俺には分からなかった。
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