好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

あれからとこれから

~風里~

あれから、綾乃とは会っていない。



綾乃も『最後』と言ったからにはそうそう俺には近づいてこない。



一度だけすれ違ったことがあった。



俺を見て、顔をこわばらせた綾乃。



すれ違いざまに、一言小さい声で「ごめんね、風里…」と俺に言った。



それだけ。



綾乃も多分、この前俺に話したのが最後のあがきだったんだと今なら分かる。



俺だって1年は付き合ってたから。



悪い人じゃないのは分かってるよ…。



その話も小糸ちゃんにちゃんとして。



小糸ちゃんは静かにうなずいて、俺のことをそっと抱きしめた。



「教えてくれてありがとうございます…」

「ううん…全部言うって約束したから…」

「元カノ…嫌い…」



そう言う小糸ちゃんの頭をそっと撫でた。



それから小糸ちゃんが上目遣いで俺をじっと見て。



キスってこと…?



にこっと笑って小糸ちゃんにキスをしたら、俺にしがみつくように抱きついた。



申し訳ないけどそれがすごくかわいくて…。



しばらく2人、抱きしめ合ってた。



それから年が替わり、4年生ももう学校には来なくなって。



多分もう綾乃と会うことはない…。



俺はほっと胸をなでおろした。



そして、小糸ちゃんの第一志望校の受験まであと1週間になった。



俺はそわそわ…。



一方の小糸ちゃんは平気そう。



「あはは、なんで先輩の方が緊張してるんですか」

「だって~。逆になんで小糸ちゃんは平気なの?」

「先輩が教えてくれるのが上手すぎて結構自信あるからかも」



そう~?



自信があるのはいいことだけど。



それに、実際一緒に過去問とか解いててもかなり良い出来なのは間違いない。



俺がそわそわしてもしょうがないか…。
< 315 / 351 >

この作品をシェア

pagetop