好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
≪いま部屋の外ですか?≫

「うん、ちょっとね。知り合いに偶然会ったんだけど俺の目の前で倒れちゃってさ。ほかに看れる人がいないから俺がちょっとそばにいるんだよね」

≪そうだったんですか! 大変でしたね…。でも知り合いに偶然会うってすごい…≫



やっぱりさすがに元カノとは言わなかった。



言っても不安にさせるだけだし…。



それから小糸ちゃんとしばらく話す。



小糸ちゃんと話すと時間があっという間に過ぎる。



1時間くらい話してたかな…。



「風里…?」



突然後ろから、綾乃の声がした。



ぱっと振り向くと、ふらふらの綾乃が立っている。



俺は思わず綾乃がカメラに映らないようにカメラの位置をずらす。



だけど、小糸ちゃんは多分綾乃が映ってたのを見逃さなかったみたい。



≪風里先輩…?≫



小糸ちゃんが不安そうな声を出す。



うーん…どうしようかな…。



浮気してないのにしてるみたいな気分…。



≪看病してる人って女の人だったんですね…≫



しょぼくれた声がする。



ああ~…。



ごめんね…。



「うん、でももう起きたから部屋に戻ろうと思うよ」

≪はい…≫



ちょっと落ち込んだみたいな顔がカメラ越しにも伝わる。



早くこの場から退散しよう…。



「小糸ちゃん、ちょっと待っててね」



そう言ってカメラを下ろす。



「綾乃、もう平気そう?」

「うん…。ありがとう…」

「じゃあ久しぶりに会ってなんだけど、俺は部屋戻るね。お大事に…」



俺がそう言って綾乃の元から離れようとした。



すると、綾乃が俺の服の裾を掴んだ。



「待って、風里…。行かないで…」
< 82 / 351 >

この作品をシェア

pagetop