雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「私が誤解していたら困るのは何故ですか?」

思いきって踏み込んでみた。今しか悠翔さんの本音が聞けないような気がしたから。

「俺の本当の気持ちを伝える前に、俺の過去について話したいから、俺の話を聞いてほしい。そのためにも家へ一緒に帰らないか?」

今まで悠翔さんが過去について話してくれたことはなかった。
勝手に悠翔さんは順風満帆の人生を送っていると思っていた。
だからこうやって改まって話があると言われると、悠翔さんも過去に何かあったのではないかと想像してしまう。
一体、悠翔さんの過去に何があったのだろうか。勇気を出して話をする決心を決めてくれた悠翔さんの想いを受け止めたい。

「分かりました。一緒にお家へ帰りましょう」

私の方から悠翔さんに駆け寄り、悠翔さんの手を掴んだ。もう悠翔さんの傍を離れないと伝えるために。

「ありがとう。一緒にお家へ帰ろう」

私の想いがちゃんと悠翔さんに伝わったみたいで安心した。
家に着くまでずっと手を離さずに歩いた。会話はせずに無言のまま…。
不思議と無言でも気まずくなくて。無言の時間が心地良かった。

「奈緒、おかえり」

家に着いて玄関の扉を開けた瞬間、悠翔さんが私の帰りを迎え入れてくれた。
ただその一言だけで私は嬉しかった。私の帰りを待っていてくれたのだと知れて...。

「ただいま」

ずっと心の中でこの家にいつまで住めるのだろうかと考えていた。
でも今この瞬間、その考えがなくなった。私はここに居ていいのだとそう思えるようになった。

「もう俺の前から居なくならないでくれよ。居なくなったら俺が困る…」

晴翔さんは憂いを帯びた目で、私に訴えてきた。
その目を見て、私は悠翔さんを傷つけたのだと知った。
もう傷ついた悠翔さんを見たくない。二度と悠翔さんを傷つけないと誓った。
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