雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「もう悠翔さんの前から居なくなったりしません。ずっと悠翔さんの傍に居たいので…」

ずっと不安だった。いつか悠翔さんに素敵な人が現れたらどうしよう…って。
その不安がもうないと分かった時点で、悠翔さんの元を去る理由がない。
あなたの傍に居られるだけでいい。それが私の望みだから。

「それならよかった。帰ってきて早速で悪いんだが、俺の話を聞いてくれないか?」

「もちろん。私でよかったらお話をお聞かせください」

「ありがとう。ソファに座りながらゆっくり話を聞いてほしい」

悠翔さんに促されたので、リビングのソファの上に座った。
私が座った横に悠翔さんも座った。悠翔さん近い…。こんなに近くに座る必要ある?!
そう思ったが、敢えて何も突っ込まないでおいた。今の悠翔さんに突っ込んてしまったら傷つけてしまいそうなので、心の中だけで留めておくことにした。

「奈緒は俺のこと…どう思ってる?」

いきなり踏み込んできた悠翔さんに、私はどう反応したらいいのか戸惑った。

「えっと…その、それはどういう意味ですか?」

もし自分の解釈が間違えていたら、言葉の意味を勘違いしたまま告白することになってしまう。
それだけは避けたい。そんなの恥ずかしくて耐えられない。

「言葉の意図が上手く伝えられなくてごめん。俺にどんな印象を持ってる?っていう意味で聞いた」

ちゃんと聞いておいてよかった。言葉の意味をそのまま捉えてしまったので、危うく勘違いしたまま告白するところだった。
どんな印象か…。改めて印象を聞かれるとは思ってもみなかったので、何て答えたらいいのか分からない。
でも今この場で答えないわけにはいかないので、ありのままの自分が思っていることを伝えることにした。

「そうですね、初めてお会いした時、社長と聞いてすごいなって思いました」

「そう思うよな。俺も逆の立場だったらそう思ったと思う。でも実際の俺はそこまですごい人間じゃないんだ。俺もある日突然、人生の歩き方が分からなくなってしまったんだ」

勝手に悠翔さんのことを順風満帆な人だと思っていた。それは勝手に人が決めつけたイメージで。本当の姿ではない。
求められるイメージと違う自分に本人が一番苦しくて辛かったと思う。
そんな悠翔さんの苦しみが分かった瞬間、悠翔さんを抱きしめたくなって抱きしめた。
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