雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜

「奈緒、俺は奈緒が好きだ。自分から偽装結婚を提案しておいてこんなことを言うのはおかしな話だが、正式に俺と夫婦になってほしい」

まさか悠翔さんの方から告白してくれるとは思ってもみなかった。
嬉しさよりも驚きの方が大きくて。暫くの間、思考が停止してしまった。
これは夢であって、現実なわけがない。あまりにも自分に都合が良過ぎて、信じることができない。

「奈緒の気持ちを聞かせてほしい。俺と正式に夫婦になってくれないか？」

悠翔さんに自分の気持ちを問われて、ようやくこれが現実なんだと実感することができた。
いざ現実だと実感した途端、あまりの嬉しさに気持ちが溢れ出た。

「私だってずっと悠翔さんが好きだったんですからね。自分から想いを告げようか迷ったぐらいに…」

我慢していた分、もう抑えきれなかった。
そんな私の想いを悠翔さんはまっすぐに受け止めてくれた。

「だから嬉しかったです。悠翔さんに好きって言ってもらえて。これから正式に夫婦としてよろしくお願いします」

私が自分の気持ちを素直に伝えると、悠翔さんが私を抱きしめた。

「奈緒も俺のことが好きだって分かって、めちゃくちゃ嬉しい。今日から奈緒は俺の正式な奥さん。もう自分の気持ちを偽る必要がないから我慢しない」

抱きしめられていた腕が離れていき、名残惜しく感じていたら悠翔さんが真剣な眼差しで見つめてきた。

「奈緒、キスしたい。キスしてもいいか？」

私は首を縦に頷いた。すると悠翔さんの片手が私の耳に触れた。
そのまま悠翔さんの顔がゆっくりと近づき、私の唇にそっと触れるだけの優しいキスをした。
互いの唇と唇が触れ合っただけなのに、心と身体が熱くなった。
その熱が冷めることはない。今まで我慢していた分、お互いに気持ちが爆発し、何度もキスを繰り返した。
最初は触れ合うだけのキスだったが、次第に深いキスへと変わった。
無我夢中になるほどキスに溺れた。好きな人とするキスがこんなにも気持ちいいなんて知らなかった。
今までキスしたことがないわけじゃない。一応、お付き合いしていた人はいた。
その時の彼とはキスもそれ以上のこともした。でもその時の彼としたキスは何も感じなかった。
当時は彼のことがちゃんと好きだったはずなのに、こんなにも違うなんて思いもしなかった。
元彼と悠翔さんを比較すること自体、悠翔さんに失礼だが、思わず比較してしまうほどに違いの大きさに驚いている。