雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「小百合さんには悠翔のことは諦めてほしいですし、できれば今後は悠翔と連絡を取ってほしくないです。
でもその代わりに私とお友達になってください。私が悠翔の代わりになるので…」

自分でも何を言っているのやら…と思った。旦那の元恋人に手を差し伸べるなんてどうかしている。
でもなんだか今は小百合さんの傍に居たいと思った。理屈じゃ考えられない、不思議な気持ちが自分の中に芽吹き始めていた。

「いいんですか？私とお友達になっても…」

「いいですよ。私が小百合さんとお友達になりたいんです…」

私が悠翔に助けてもらったように、誰かが困っている時や落ち込んでいる時に、そっと手を差し伸べられる人でありたいと思った。
その相手がたまたま自分の旦那の元恋人だっただけで。複雑な気持ちだったのが嘘みたいに、今は心の中が澄んでいた。

「…悔しいけれど、悠翔が奈緒さんを選んだ理由が分かったわ。悠翔、奈緒さんみたいなこんなに良い人なんて早々いないから、大切にしなさいよ」

小百合さんの言葉を聞いた瞬間、小百合さんが悠翔への想いを完全に断ち切ったことが伝わった。
これでようやく小百合さんは前へ進むことができる。私はそのことに心から安堵した。

「小百合に言われなくても、大事にするし、もう既に大事にしてるよ」

「そう。それなら良かったわ。…奈緒さん、私と友達になってくれる件ですが、」

固唾を飲んで、小百合さんの言葉の続きを待った。断られる覚悟を持って…。

「奈緒さんさえ良ければ、私とお友達になってほしいです。これからよろしくお願いします…」

ってきり断られると思っていたので、まさか友達になってもらえるなんて思ってもみなかった。

「あの…、自分から提案しておいてあれですが、本当にいいんですか？」

動揺して思わず、変なことを聞いてしまった。
何言ってるんだ、私…。こんなことを聞かれても、小百合さんを困らせてしまうだけなのに。
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