雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「私も本音を言えば、奈緒さんとお友達になるなんて複雑だなって最初は思いました。
でも奈緒さんのことを知れば知るほど、人柄の良さに私も奈緒さんを好きになってしまいまして…。
もうこうなったらいっそのこと、元彼の奥さんとお友達になってみようかなって思ったんです」

小百合さんの言うことはご尤もだ。何故、元彼の現奥さんと友達にならなくてはいけないの?って普通なら思うはず。
自分から提案しておいてあれだが、私だってそう思っている。
でも小百合さんと話してみて、お友達になりたいと思った。複雑な関係性を無視してでもお友達になりたいと…。

「冷静に考えてみると、変な話ですよね。元カノと元彼の奥さんが友達になるなんて、普通有り得ないですもん」

「そうですね、普通有り得ないですね」

「理屈じゃ有り得ない関係性かもしれないですけど、そんなこと関係なしに私も小百合さんの人柄に惹かれちゃったんです。それに私も小百合さんを救いたいと思ったんです」

「私を救いたい…?」

「はい。小百合さんを救いたいんです。私が悠翔に救ってもらったように…」

人は一人では生きていけない。どん底にいる時こそ、誰かに救ってもらえることで明るい方向へ進むことができる。
今の小百合さんにはあの時の私みたいに、誰か救ってくれる人が必要だ。その役目に私がなりたいと思った。

「誰しも手を差し伸べてほしい時ってあると思うんです。私は悠翔にそれを教えてもらいました。
小百合さんは今、誰かの手が必要な時だと思います。だから手を差し伸べたいって思ったんです。
とはいっても、私なんかに手を差し伸べられても、嬉しくなんてないかと思いますが、でももし私で良ければ私が小百合さんの心の奥底に抱えている想いを、全て受け止めたいって思ったんです」

小百合さんの気持ちが大事だ。誰を選ぶのか、決める選択肢があるのは小百合さんだから。
拒否されても構わない。それでも私の想いが伝わっていればそれでいい。

「奈緒さん、私のためにそう言ってくれてありがとう。せっかく奈緒さんが手を差し伸べてくれたので、私は奈緒さんのお言葉に甘えたいです。私とお友達になってください。これからよろしくお願いします…」

自分の想いが小百合さんに届いたことが、心の底から素直に嬉しかった。
純粋な想いは届く。まっすぐであればあるほどに…。
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