【短】卒業〜飯田理子の場合〜
ハッと息を呑んだのは彼の方かそれとも私か。
頬を伝う涙がやけに熱い。
彼の前で泣くなんてサイアク。だから学校でさっくりと振ってしまって欲しかったのに。
でもなぜ…
ぼやける視界にうつる彼の顔が歪んで見えるのは涙のせいだけではないみたい。
今にも自分も泣き出しそうな顔をして、苦し気に私を見下ろしている。

「……なんだよ、都合の良い女って。そんなふうに思ってたワケ?」

腕を拘束する力がどんどん弱まっていく。
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