まだ誰も知らない恋を始めよう
実はロジャー・アボットは、フィニアスの叔母の継子であり、ペンデルトンの血を引いておらず、ホテルの要職につけなかった事。
フィニアスの祖父や父がこの件を表沙汰にしたくなくて今は静観しているのに、ステラ・ボーンズを使って、行方不明の噂を構内に広めようとしている事。
何よりフィニアスに
「俺はペンデルトン一族の中では、居ないように扱われる」と愚痴っていた事。
以上をふたりで交互に話し、お互いに言葉の足りない部分は付け加えた。
これで、わたし達の『ロジャー犯人説』は伝わるはず。
「で? それがアボットが怪しいと思う理由か」
「……」
兄の意味ありげな半笑いが引っ掛かる。
これだけでも、充分に怪しいと思うけど?
兄は軽く頭を振ってから、
「じゃ、次は俺の話な」と言って、自分の見立てを話し出した。
「これはあくまで、俺の私的見解。
そんな感じで、思い込みも決め付めも無しで聞いてくれ。
さっきも言った通り、俺とアボットには個人的な付き合いは無いし、それ程思い入れも無い。
だから、これまで特に関心も持たなかった。
ただのビジネス上での対面しか無いが、あいつからは悪意を持っている人間特有の、澱みのようなものを、今まで感じたことが無いんだ。
そういう感覚、エルなら分かるよな?」
フィニアスの祖父や父がこの件を表沙汰にしたくなくて今は静観しているのに、ステラ・ボーンズを使って、行方不明の噂を構内に広めようとしている事。
何よりフィニアスに
「俺はペンデルトン一族の中では、居ないように扱われる」と愚痴っていた事。
以上をふたりで交互に話し、お互いに言葉の足りない部分は付け加えた。
これで、わたし達の『ロジャー犯人説』は伝わるはず。
「で? それがアボットが怪しいと思う理由か」
「……」
兄の意味ありげな半笑いが引っ掛かる。
これだけでも、充分に怪しいと思うけど?
兄は軽く頭を振ってから、
「じゃ、次は俺の話な」と言って、自分の見立てを話し出した。
「これはあくまで、俺の私的見解。
そんな感じで、思い込みも決め付めも無しで聞いてくれ。
さっきも言った通り、俺とアボットには個人的な付き合いは無いし、それ程思い入れも無い。
だから、これまで特に関心も持たなかった。
ただのビジネス上での対面しか無いが、あいつからは悪意を持っている人間特有の、澱みのようなものを、今まで感じたことが無いんだ。
そういう感覚、エルなら分かるよな?」