まだ誰も知らない恋を始めよう
「トレーシー・マーロウさんね……
 じゃあ、ヴィオン教官に面会可能かの確認だけ取ってくるから、ここでお待ち下さい」

 そう言ってくれて、相方さんに合図して駆け出して行ってくれた。
 凄い、ジェリーの名前を出しただけで、対応が変わるなんて……
 あの子は一体……何者?


「ジェリーって……普通の女の子じゃない感じ?」

「……さぁ、どうなんだろうね。
 会ったことも無い彼女の事なんて、俺は知らないし……」

 一瞬の間があって、フィニアスの返事がある。
 会ったことも無いなんて、わざわざ言う?
 その不自然さが何んだか怪しい。

 それに今まですっかり忘れていたけれど、フレディ・グラントの家の力の件も気になっている。
 少なくとも、その話は後で聞かせて貰おうかな。


 何となく視線を感じて顔を上げると、ここにとどまっている方の門番さんが、わたしを見ている。
 あー、またやってしまった!?
 隣にフィニアスが居るのは他の人には見えないのに、少し気が緩むと、彼に話しかけてしまう。
 
 きっとこの人は戻ってきた相方に、やっぱりあの女は危ないから、入れたら駄目だ、と言いそうだ。
 その良くない予感を裏付けするように、門番さんがわたしに近付いてきた。


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