まだ誰も知らない恋を始めよう

32 生温かい目で見られた彼とわたし

「魔法には掛けた奴の匂いが残ることが多くてさ、お兄さんの姿を見えなくした魔法には、そいつの匂いが残ってる。
 余程何重にも掛けたんだろね、見えない魔法、話せない魔法、触れない魔法……後はまだ分からないな」

「ごめんなさい、図々しいのは承知しています。
 お願いです、何の魔法を掛けられたのかご存じなら、それを解いてください!
 お願いします! 助けてください!」

 その勢いにわたし以外の人達 (フィニアスも含めて) は驚いていたようだけれど。
  彼も慌てて頭を下げて、お願いします、を繰り返した。


「あー、ごめんね?
 俺には解術は出来ないんだ。
 魔法は、特に外れが掛けた黒魔法は、掛けた奴にしか解くことが出来ない。
 だから、そいつを捕まえなきゃ、お兄さんは消えたままだ、一生ね」

「一生……このまま?」

 オルくんのその言葉で、フィニアスは完全に心を折られたように見えた。
 けれど、反対にわたしには、昨日までどうしたらいいか、道筋さえ見えていなかったのに、先の方に明かりが見えてきた気がした。

 外れの痕跡を追い掛けて、捕まえて、解術させる!
 父に頼んで、相棒の魔法士さんにお願いすれば何とかなる! 
 

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