まだ誰も知らない恋を始めよう
「……どうしたらいいか、とさっきから考えていたのですが、マッカーシー家は何代にも渡って、女児にはその能力は遺伝しないとしてきましたね?
 多分、貴女以外にも力を持っていながら、その存在を隠されてきた方は何人もおられるはず。
 外れを追跡する力をお持ちのチャールズ卿に近いお血筋の女性なら、彼に似た力をお持ちなのでは?」


 魔法庁に隠されていた存在なら、動いても気付かれない。
 わたしの頭の中に、父と近い血筋の女性の姿が思い浮かんだ。

 アリア叔母様……父の妹で、9年前に母の葬儀で父と大喧嘩してから、交流は年に1度の新年祝いのカードのみになったけれど、兄とわたしを可愛がってくれていた叔母なら。


「おひとり居ます、その方は……」

「その方のお名前は、ここでは仰らないでください。
 知れば、わたしはどうしてもその能力を確かめたくなる。
 聞かない方、知らない方がいい事は多いんですよ」

「でさ、出来たらさ」

 ベッキーさんのお気遣いに御礼を言おうとした時、引っ張られた耳をさすりながら、オルくんが口を挟んで来た。


「その外れをここまで連れてきてよ。
 俺がそいつの魔力喰ってやるよ。
 そしたら、俺が解術してあげられる」

 魔力を喰う?
 不気味なその言葉に、一瞬寒気がした。
 ニコニコと邪気のない笑顔が怖い。


「喰うどうこうより、先に外れの名前を言え」

 また耳に伸びてきたベッキーさんの手を避けながら、オルくんはご機嫌だ。


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