まだ誰も知らない恋を始めよう
俺が中等学院の入試前から家で本を読まなくなったのは、冒険や魔法や伝奇の世界に憧れるようになったことで、父から
「そんなつまらない作り物に夢中になるな」と言われたからだ、と思い出す。
「もう子供ではないのだから、同じ読むのなら、ペンデルトンの経営に役立つビジネス書を読め」とも言われたな。
「そうなのですね……認めるのは辛い事ですが……
わたくしは息子の事を何も知ってはいなかったのですね……」
母親である自分よりも、いきなり現れた女学生の方が、息子の本当の姿を知っているように思えたのか、もうそれしか言えない母は小さく呟いて俯いた。
その母の両肩を背後から支えるように掴んだグレンダがダニエルを睨みつけた。
「どこからフィニアス様の事を聞きつけたのか、存じ上げませんが。
傷心の奥様につけ込むような真似はなさらないでくださいませ」
傷心につけ込むような真似?
家での俺と外での俺の姿が違うだけで、傷付いた様子を見せる母を、乳姉妹のグレンダが慰めたいのは理解できるが、ダニエルを攻撃するのは違うだろう。
「そんなつまらない作り物に夢中になるな」と言われたからだ、と思い出す。
「もう子供ではないのだから、同じ読むのなら、ペンデルトンの経営に役立つビジネス書を読め」とも言われたな。
「そうなのですね……認めるのは辛い事ですが……
わたくしは息子の事を何も知ってはいなかったのですね……」
母親である自分よりも、いきなり現れた女学生の方が、息子の本当の姿を知っているように思えたのか、もうそれしか言えない母は小さく呟いて俯いた。
その母の両肩を背後から支えるように掴んだグレンダがダニエルを睨みつけた。
「どこからフィニアス様の事を聞きつけたのか、存じ上げませんが。
傷心の奥様につけ込むような真似はなさらないでくださいませ」
傷心につけ込むような真似?
家での俺と外での俺の姿が違うだけで、傷付いた様子を見せる母を、乳姉妹のグレンダが慰めたいのは理解できるが、ダニエルを攻撃するのは違うだろう。