まだ誰も知らない恋を始めよう

41 彼に愛してると告げるわたし

 その後、帰るわたしを何度もフィンが引き止めてくれた。


「本当に帰っちゃうか……」 

「仕事の時間だからね、帰るね」

 今日はこれからシーズンズの遅番シフトに入っているので、『祝フィニアス帰還の晩餐』のお誘いをお断りさせていただいた。



 ペンデルトン邸の玄関ホールで、わたしは3人からお見送りされている。
 ここは、ペンデルトン夫人との面会前に1時間近く待たされた場所だけれど、あれが今日じゃなくてずっと前の出来事みたいに感じていた。



「もう少し、ゆっくり出来ない?
 ひとりで置いていかれるのが不安、と言うか……」  

「何言ってるの、書いたら意志の疎通は出来るようになったでしょ?
 わたしの通訳はもう要らないよ」

「……」


 無事、この状況を理解してくれたご両親が居る自宅で過ごせるようになったのに。
 どうして、そんな捨てられた子犬みたいな瞳で見てくるかな。
 お願いだから、そんな目をして、小首は傾げないでね?
 彼のあのあざとい仕草に、わたしは弱い。

 何だか自分が酷いことをしているような気にさせられて、わたしはしょんぼりしている(ように見える)彼から目を逸らした。


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