まだ誰も知らない恋を始めよう
 ジェリーが言う通り、自分の力の限界を認めるのが、凄いのなら。
 うん、わたしは凄い、と思うことにしよう。


「偉そうついでに、忠告させてくれますか」

「うん、何でも言って」

「これまでの流れのお話を聞く限り、長期間に渡って捜査をされているお兄様には内緒で動かない方がいいと思います。
 叔母様に会いに行く前に、お兄様にご相談されては?」


 うー、兄に相談かぁ。
 やっぱり話しておかなきゃダメかぁ。
 またうるさく言われそうで、躊躇してしまう。


「報連相、絶対に必要です。
 ヒロインが勝手に動いた結果、周りに迷惑かけて大変なトラブルになっちゃうのは、物語の定番ですからね」


 わたしはヒロインなんかじゃないけど、勝手な考えや行動で、トラブルを招きそうなのは確かだ。
 それにしても、ジェリーの言葉には実感がこもってる。


「それって、ジェリーの経験談だったりする?」

「えぇ、以前ひとりで解決出来ると、周囲に黙って動いて。
 毒を飲んでしまったんです」


 今、毒を飲んだ、って言った!?


「そのおかげと言ったらあれですが、人生やり直しも出来て、結果オーライでしたけど。
 でも、ダニエルさんは報連相、お忘れなく」

「はぁ、そうね、そうですね。
 了解です」


 どういう事なのかよく分からないけれど、毒を飲んだおかげで人生をやり直せて(心機一転って事だよね?)満足気なジェリーに言い切られ、わたしは頷いた。

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