まだ誰も知らない恋を始めよう
 待って、待って、どういうこと?
 淡々と語られる叔母の説明に、わたしの胸の鼓動はどんどん早くなり、鳥肌が立ち始める。


「……魔力と悪意は違う?」

「そうねぇ、わたしが嗅いだメイトリクスの悪臭から感じ取れたのは、劣等感や歪んだ執着。
 それと何かに対する渇望で、ドロドロしてて、酷い臭いを放ってるの。
 それって魔力とは違うでしょう。
 メイトリクスの根本的な本質と言えば分かるでしょ。
 そいつは、ノートに何を書き綴っていたのかしらね」


 メイトリクスの心の叫びが綴られたノート。
 その内容を知ってか、知らずか。
 オルくんはそれを千切って、わたしに渡した……


「つまり、オルくんは黒い魔力が臭い、と言い。
 アリア叔母様は、メイトリクスの心が臭い、と言ってるの?」

「そういう事よ。
 それに触れた貴女にも、その匂いが微かにしてる」


 頷く叔母の姿に、メイトリクスを辛辣に語ったオルくんの声が重なる。



「変身するしか能がなくて、他の魔法はポンコツだった」

「読んだら試したくなるよね、分かるわ。
 あいつは張り切って、お兄さんにそれを掛けたんだ」


< 200 / 289 >

この作品をシェア

pagetop