まだ誰も知らない恋を始めよう

49 身近な恐怖に震えるわたし

 メイトリクスがわたしの身近に居る!?
 冗談にしても、アリア叔母様は人が悪い……と言いかけて、気付いた。

 叔母からは、わざと別れ際にオルくんが見せた、意地悪を言ってやろうとか、からかってやろうとか、わたしに対するそんな負の感情が無いから、何も読み取れない。
 それでも、わたしは抵抗を試みた。
 

「昨日からあの紙を持っていたから、その匂いが移ったんだと思う、きっと……」

 そんな抵抗虚しく、叔母は首を振る。


「ダニエルはあれを古いお財布の中に入れて、それをまた小さな袋に入れて、つまり密封に近い状態でバッグに入れてた。
 何も匂わなくても、小さくても外れの物だし、やはり気味が悪かったんでしょう?
 貴女は取り出す時も指先でつまんでいたわ。
 そんな扱いなのだから、あの紙片で貴女まで臭う事は無いの。
 わたしが言ってる接触ってね、本人と手を握るとか、抱き合うとか」

「……だったら、やっぱりメイトリクスの黒魔法に掛けられたフィンからわたしに移って、でしょう?」


 それは自ら、フィンとは手を繋いで抱き合った、と明かしたのと同じだったけれど、叔母はそこはスルーしてくれた。
 

「魔法学院のオルくん、よね?
 彼が言ったのは、フィニアスさんに残るメイトリクスの魔力の匂いでしょう?
 わたしには魔力の残滓なんて分からない。
 わたし達マッカーシーが感じ取れるのは、悪意のみだって貴女が1番よく知ってるでしょうに」


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