まだ誰も知らない恋を始めよう

58 彼の従兄に詰められるわたし

「まぁ、ダニエルさん! ようこそ! お待ちしていましたわ。
 ザカリーから迎えに出ないように言われて、失礼してごめんなさい」

 ロジャー達との話を切り上げて、ソファーから立ち上がった夫人がわたし達を出迎える。


「ルディア・ペンデルトンと申します。
 家名ではなく、ルディアと呼んでいただけたら嬉しいわ。
 確か、叔母様と、こちらはお母様の方のお従姉さんとお聞きしています。
 おふたり共、とてもお綺麗な方ね!
 今夜は若いお嬢さんも2人いらっしゃって、皆様のおかげで場が華やぐわ、ね、ザカリー。
 ダニエルさんって本当に愛らしくて、わたくしも夫も大好きになりましたのよ。
 叔母様方とも、末永く親しくお付き合いをさせてくださいませ」

 
 そしてその勢いのまま、わたしを抱擁し、叔母とベッキーさんに挨拶をされるので、誰も途中で言葉を挟めない。

 その手放しの歓迎ぶりに苦笑しながら、ペンデルトン氏もこちらに来られたので、置いていかれた形のロジャーは微妙な表情をわたし達に向けていた。

 甥のロジャーは身内の夕食会に現れた見知らぬ3人の女に、戸惑いの視線を寄越すだけだが、愛想笑いをやめた真顔のステラの方は……
 

 彼女が足早に応接室を出て行ったので、ルディア夫人の話の途中だったけれど、わたしはご夫妻にこの場を外れる事を告げてから、慌てて彼女の後を追った。


 ようやく夫人に自己紹介を始めた叔母とベッキーさんが心配そうにわたしを見ていて、特に叔母が何かを伝えたいように見えたけれど、今はステラを優先したかった。
 夕食会が始まる前に、彼女と話をしなければならないと思った。

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