まだ誰も知らない恋を始めよう
「今日のご予定に無かった、お客様をエスコートされていまして、その件で旦那様にお話があったようです」


 本当はこんな話を来客に漏らしては、執事長としていけないのだろうけれど。
 彼は、応札室に居るのが、ペンデルトンご夫妻とロジャーだけではない事を、教えてくれた。


 そうして通された第1応接室には、ロジャーと思われる1人の男性と、彼が連れてきた若い女性が、ペンデルトンご夫妻とウェルカムドリンクを片手に談笑していた。

 ロジャーの隣に座っていたのは赤いドレス姿のステラ・ボーンズで、彼女は入ってきたわたしを見て、笑顔が固まった。


 まだ、わたしとフィンの話は出ていなかったのだろうか。
 夕食会が始まる前には話さないように、ペンデルトン氏が夫人に釘を刺していたのかもしれない。

 
 ここで会って驚いたのはわたしも同様だったけれど、彼女程じゃない。
 サミュエルさんから予定に無かったお客様をロジャーがエスコートして来た、と聞いてからは、その人物はステラなんだろうな、心の準備は出来ていた。


 ショックを受けたのは、わたしを認めた瞬間にステラの心に浮かんだ、何とも言えない否定的な暗い感情が、わたしに向かってきたからだ。

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