まだ誰も知らない恋を始めよう
「先に、レディ・アリアと母方の従姉? のレディ・ヴィクトリア・メルヴィルには、僕からはご挨拶はしたけれど、ステラはまだだからね、迎えに来たんだけど。
彼女、化粧室に行った?」
「え、えぇ……入っていくのは見ました」
「メイクを直してるのかな、まだ会ってない?」
「……わたしもこれから、彼女と話したいと思ってて」
「へぇ、そうなんだ、何の話をするのかな?」
……何だろう、この感じ。
最初、愛想良く感じた彼の笑顔が、徐々に何だか笑っていないように見え始めた。
悪意とまではいかないから、彼が思っている事は読めないのだけれど、冷え冷えとしたものに変化しつつあるのが、手に取るように分かった。
ロジャー・アボットは、わたしと対峙する内に機嫌が悪くなり始めている。
だったら、無理に話さなくてもいいのに。
私の事なんか放っておいて、化粧室の前でステラが出てくるのを待てばいいのに。
それでも、彼はいかにも楽しそうにわたしに話し続ける。
「昨日、ステラにプロポーズしたんだ。
彼女には、自分がペンデルトンの末席に居る事は隠してた。
何故だか、分かる?」
「……さぁ」
分かる? とロジャーは尋ねるけれど、わたしの答えなど求めていないのは分かる。
「同じ大学なんだから、フィニアスの事は知ってるよね?
彼みたいな従弟が居るとね、なんかそれ目当てで寄ってくる女の子達も多くてね。
だから、本気になったステラには黙ってた」
「……」
彼女、化粧室に行った?」
「え、えぇ……入っていくのは見ました」
「メイクを直してるのかな、まだ会ってない?」
「……わたしもこれから、彼女と話したいと思ってて」
「へぇ、そうなんだ、何の話をするのかな?」
……何だろう、この感じ。
最初、愛想良く感じた彼の笑顔が、徐々に何だか笑っていないように見え始めた。
悪意とまではいかないから、彼が思っている事は読めないのだけれど、冷え冷えとしたものに変化しつつあるのが、手に取るように分かった。
ロジャー・アボットは、わたしと対峙する内に機嫌が悪くなり始めている。
だったら、無理に話さなくてもいいのに。
私の事なんか放っておいて、化粧室の前でステラが出てくるのを待てばいいのに。
それでも、彼はいかにも楽しそうにわたしに話し続ける。
「昨日、ステラにプロポーズしたんだ。
彼女には、自分がペンデルトンの末席に居る事は隠してた。
何故だか、分かる?」
「……さぁ」
分かる? とロジャーは尋ねるけれど、わたしの答えなど求めていないのは分かる。
「同じ大学なんだから、フィニアスの事は知ってるよね?
彼みたいな従弟が居るとね、なんかそれ目当てで寄ってくる女の子達も多くてね。
だから、本気になったステラには黙ってた」
「……」