まだ誰も知らない恋を始めよう
 あぁ、それはそうでしょうね、と言いたいが、言い方を間違えると爆発されそうな危うさに無言で通した。


「名前と年齢と勤務先しか知らなくて、家の事も親の事も何も話さなかったのに、結婚を承諾してくれて、嬉しかったなぁ。
 それで今夜は身内だけの夕食会があるだろう?
 それに彼女を連れてきたんだ、僕の目の色のドレスも贈ってね」

「……そうなんですね、おめでとうございます」

「ありがとう、君も喜んでくれるんだ」

「え、えぇ、それはもちろん……」
 
 
 そう答えると、どこか不穏な雰囲気を漂わせながらロジャーが1歩わたしに近付いた。
 言葉だけ聞いてると親しげだけど、彼の目付きがそれを裏切っている。
 全然笑ってないのだ。


「あのさ、君は何なの?
 どうして、こんなに早く来たの?
 いや、そもそも身内だけの、って聞いてたのに、どうして他人の君達が来た?」


 大きな声を出された訳じゃない。
 だけど、ロジャーは今や、わたしには不快感を隠さずに言葉をぶつけ始めた。

 どうしてなの、彼は明らかにわたしに対して怒りを持ち始めてて、それが分かるのに、ロジャーの心が読めない!

 まさか、まさか……

< 243 / 289 >

この作品をシェア

pagetop