まだ誰も知らない恋を始めよう
 そんなニールの言い草に、わたしは呆れた。
 遥か昔に、彼が言う大変な時期が終わっているのを指摘してやりたいが、今更の話なので言わない。
 
 
「ずっと、謝りたかったけど……悪いことしたなぁ、って。
 こっちに戻ってきてからも、モーリスと君の事は気にはなってたんだ。
 それにしても、髪色は成長したら変わることもある、ってよく聞くけど、瞳の色も変わるのかな?
 そう言えば、今は君は何して……」

「ダニエルが黙って聞いているからって、いい加減にしろよ!
 悪いことしたなぁ、って何だよ、それが謝罪の言葉か?
 ちゃんと謝れよ、すみませんでした、だろ。
 ころころ話題を変えやがって、それで誤魔化す気か!」

 残念ながらニールには聞こえないのに、間に入ったフィニアスがわたしの代わりに文句を言ってくれて、わたしは笑いを噛み殺した。

 全く、その通り!
 そうなの、こいつは昔から言い訳を繰り返して誤魔化して、絶対に謝らない奴なの。 

 今だから分かるけど、謝らない男が格好良く見えてた幼いわたしは頭が悪かった。
 あの頃のまま、今も謝らない男ニールが初恋だったなんて、隠しておきたい黒歴史だ。
< 63 / 289 >

この作品をシェア

pagetop