まだ誰も知らない恋を始めよう

「それはつまり、従姉と夫は……」

　そう、ふたりは不倫をしていて、家族思いの顔を見せていたニールの父親は、結婚前から妻を裏切っていた。


「従姉は命までは狙わなかったけれど、夫人に２人目の子供は産ませたくなかった。
　それで家族に病人が居て、お給料だけでは大変だったリリィに目を付けた。
　子爵は知らなかったと関与を否定して、お咎めは注意で済んだけれど、パーキンス夫妻は離婚して。
　主犯の伯爵家の従姉は領地に押し込められただけだったのに、従犯の平民のリリィは仕えていた家の奥様を害そうとした罪で、 裁判も無しで18年の禁固刑にされたの」

「平民が貴族に手を出して、それも可愛がってくれていた奥様を裏切ったんだ。
　命が取られなかっただけでも幸運だった」

「……ニールは夫人と共に実家に引き取られて、王都を離れる事になった。
　最後に母と見送りに行って、彼に罵られたの。
　あの時わたしの目が金色に光るのを見た、お前がリリィを唆した、今も俺をその目で見てる、気持ち悪い、もう２度と近付くな、人殺し、だったかな。
　18年も牢屋に入れられるなんて、彼からしたら死刑も同じだったの。
　ニールは好きだった少女と尊敬していた父親を失ったのは、わたしのせいにしたかったみたい」