まだ誰も知らない恋を始めよう
「不倫していた父親が原因なのに、クソガキの八つ当たりじゃないか! 」

「あの時、ニールに言われたこと、まだ覚えてた。
 ……わたしの記憶力、すごいよね」


 そう言って、わたしは笑って見せたのに。


 わたしよりも苦しそうな表情をしたフィニアスがテーブルの向こうから、こちらに回ってきて。

 わたしは彼に、ふわりと抱き寄せられた。


「絶対に君のせいじゃないから、忘れてしまえ」

「ありがとう、わたしは大丈夫だからね?
 あんなクソ野郎、もう吹っ切ったから貴方に話せたし」

「……」


 またしても、いきなりのハグに焦るわたしに、彼は何も答えず。
 ただ子供をあやすみたいに、ひたすら同じリズムで背中をぽんぽんと優しく叩く。

 その優しさに、このまま……と願ってしまうけど。
 
 
「貴方には話せなくて、隠していた事があるの。
 勢いで、このまま話しちゃう。   
 まずは、これがニールの言う、光る目で。
 わたしの本当の色」


 初めて家族以外の前で、わたしは眼鏡を外した。


 この目を見たら、気持ちが悪いって、貴方もわたしを嫌がって。
 
 その優しい手を離してしまうのかな。
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