まだ誰も知らない恋を始めよう
 薄い茶と黄色の間の、詩的に言えば、ひまわりのような色で。
 彼女の顔向きが少し角度を変えるだけで、さっと薄緑が入ったり、色味が変わって。
 もし、俺を見つめている今の状態が『金色に光っている』状態だとしたら。


 気持ち悪いなんてとんでもない。
 俺には夏のひまわり畑の妖精にしか見えない。
 俺は母の実家が治める西部で見た、ひまわり畑を思い出していた。

 眩しい太陽の下、一面に広がる黄色、薄茶、緑……


「き、綺麗だ、綺麗……めちゃくちゃ綺麗な目をしてる……」

「え、フィニアス?」

 俺は、それこそ自覚無しに、目の前の妖精の手を握っていた。


「あの、クソ馬鹿まぬけに言われたことなんて、全然!
 全然、気にしなくていい。
 これからは眼鏡を外して貰って、その綺麗な瞳をずっと見つめていたい、とは恥ずかし過ぎてお願い出来ないけど。
 君の瞳はすごく綺麗で、隠しているのが勿体ない、と俺は思った」

 感情が昂って、何を口走ったかあまり覚えていないが、確かなのは綺麗と連呼した事で。
 それが嫌だったのか、俺から顔を背けたダニエルに、握った手を引き剥がされた。
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