月が、綺麗だったんだ
 お互いに尊重し合うことが、徐々に減っていった。


『ご飯できてないのかよ』


 いつの間にか、私がご飯係。


『部屋が綺麗じゃなかったら、休んだ気がしない』


 いつの間にか、私が掃除係。


『今日は疲れてるから、もう寝るわ』


 私たちの時間は、作られない。


 私だって、休みたかった。
 甘えたかった。


 でもそれを素直に言えないのが、私のよくないところだった。
 強がって、一人でも平気、みたいな態度を取って。


 本当、バカみたい。


「だから……別れるのは、時間の問題だったんだよ」


 お互いに、好きあっていないことはわかってた。


 でも、別れたら当然、同棲は解消されて。
 そうなれば、面倒ごとが増えてしまう。


 だったら、少しくらい耐えよう。


 そう、思ってたのに。


「でもまさか……ほかに好きな人ができたって言われるとは、思わなかったなあ」


 アイツに別れたいって言われたとき。


 ああ、本当に終わりなんだ。
 やっと、終われるんだ。


 そう、同時に思った。


 琉唯はまだなにも言わない。
 ただ黙って、私の隣を歩いている。


 どんな顔をしているのかは、もう見れなかった。
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