虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
気がつけば、岳はその中のひとりを目で追っていた。
年配の仲居が多い中で、無駄のない動き方で客を案内しているから若さが際立っている。
その姿勢やお辞儀の角度に至るまで、明都ホテルのホテリエのようなマナーすら感じた。
若女将のような目立つ美しさはないが清潔な印象だし、きっちりとほつれもなくまとめ黒髪にはつやがある。
華奢な体に、仕事へのエネルギーが満ちている。ふと、以前にもそんな感情を抱いたことを思い出した。
(既視感がある)
初めて訪れた場所なのに、岳は彼女のことを知っている気がした。
ほっそりした立ち姿や、スキのない仕草に見覚えがあるのだ。
(どこで会ったのか……)
思い出せなくて気持ちがざわざわするし、妙にじれったい。仕事関係だったのか、明都ホテルの客として応対しただろうか。
いくつかのケースを想定していたら、ふと相手と視線が絡まった。
なぜかその仲居は、岳を見て一瞬目を見開いたような気がする。