虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「視線は感じたのですが、お顔まで見る余裕はなくて」
「何人かは顔見知りよ。こっちに声をかけたくてうずうずしていたわ」
「お知り合いでしたか。すみません、気がつかなくて」
「いいのいいの。みんな兄の妻の座っていうのを狙っていた人たちだから」
銀座のホテルに勤めているころから、岳の評判は知っていた。
明都ホテルグループの御曹司だから縁談は絶えることがないし、告白されることもよくあると耳にしていた。
真矢たちホテルのスタッフだって、岳を見かけると騒いでいたくらいだ。都々木岳の結婚相手が誰になるのか、皆が興味津々なのだろう。
「私は仕事だけの関係ですし、岳さんの相手として見劣りしますよね」
真矢がずっと心の中で思っていたことをつぶやいたら、華怜に心細い気持ちが伝わったようだ。
「自信を持って、真矢さん。あのお兄さんが、わざわざマンションに住まわせているなんて愛されている証拠よ」
「華怜さん」
「愛されている」と言い切ってくれた華怜の言葉がありがたかった。
それは真矢がほしかった言葉だが、本心を隠して気付かないふりをしていたのだ。
「兄が女性と一緒に仕事をして、あんなに楽しそうに暮らしているなんて信じられないくらいよ」
華怜の言葉に、少し落ち込んでいた真矢の気持ちは軽くなってくる。
「あの、ありがとうございます。そう言ってくださってうれしいです」
「真矢さん、弱気はダメよ。これままだと負けちゃうわ。もう控えめではダメなの」
「は、はいっ」
思わぬ叱責を受けて、真矢は助手席で飛び上がりそうになった。