虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
ところが一緒にマンションの部屋に戻るとばかり思っていた華怜は、真矢を降ろすと「がんばって」の一言を残してさっさと帰っていった。
午前中から出かけていたから、もう夕暮れ時だ。
今日の予定は聞いていなかったから、岳は出かけているか書斎にこもっているかわからない。
(どうしよう)
真矢はドキドキしながら玄関のドアを開けた。
「ただいま」
中に入ると、目の前に岳がいた。
「おかえり」
「今からお出かけですか?」
出かける準備をしていたようで、手にはおしゃれなジャケットを持っている。
「いや、あんまり遅いから迎えに行こうと思っていたところだ」
華怜と銀座をぶらついているなら車で迎えに行って、三人で食事でもすればいいと思ったと言う。
「すみません。華怜さんとのおしゃべりが楽しくて」
そう言って岳の顔を見上げると、微動だにせず立ち尽くしている。
「あ、あの、たくさん買い物させていただきました。カード、ありがとうございます」
「いや、婚約者に必要なものだからかまわない」
真矢があまりにじっと見つめたせいか、岳が先に視線を逸らした。
「あの……華怜さんと相談して買ったのですが、やっぱり似合いませんでしたか?」
おしゃれな髪形や服装なんて、岳は興味がないのかもしれない。さっきまでの華やいでいた気持ちは、スッと冷めていた。
岳が喜んでくれるとまでは期待していなかったが、まさか絶句されるほどひどいとは思わなかった。
「そんなことはない」
がっかりしていたら、岳の視線が真矢に戻ってきた。
「きれいすぎて、言葉が出なかったよ」
にっこりと笑ったまま、いきなり真矢の手を取った。
「このまま食事に行こう。やっとデートができる」
「はい?」