虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「お断りします。というより、そもそも考え直す余地もない」
はっきりとした岳の返事が部屋に響いた。
「岳、都々木家の跡取りならもっと考えろ」
岳の態度を見て、会長は焦っているようだ。
経営者なら得になる相手を選べと言いたいのだろうが、岳の怒りは今にも爆発しそうに見える。
「おじいさん、ボケるのもいい加減にしてください。さっきお伝えしたばかりですよね。私の婚約者はここにいる真矢です」
「あ、ああ」
「俺が真矢を裏切るわけがない」
きっぱりと言い切った岳の言葉が、今の真矢にはなによりも心強い。
「それに、真矢以上に俺の妻にふさわしい女性はいません」
「岳さん」
真矢の心は感動で震えていた。
岳は、真矢の価値を認めてくれているのだ。
「これ以上、おじいさんやお父さんが無理強いするなら都々木家を出ていきます」
がまんの限界なのか、岳が真矢と手をつないだまま立ち上がった。
「それはダメだ!」
それまでずっと黙っていた叔父が、いきなり立ち上がって叫んだ。
叔父が大きな声を出すところなんて、真矢は見たこともなかった。
「あなた、急にどうしたの?」
夫の様子がおかしいと思ったのか、叔母もオタオタし始めた。
立ち上がった叔父は、震えながらこぶしを握りしめている。その姿は異様に思えた。
「もう、もう、やめてくれ」
叔父は喉の奥から振り絞るような声を出して膝から崩れ落ちた。