虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます




***



マンションに着いても、岳は真矢の手を離さなかった。

「岳さん」
「俺が君を裏切ることは絶対にない。ほかの女性を選ぶなんて、ありえないから」

陽依との婚約不履行の話が出たとき、一瞬だけ真矢が逃げ出したくなったことがわかっていたのだろう。

「ごめんなさい」

誰もが陽依を大切にするんだと、真矢の記憶には刷り込まれている。
もしかしたら岳も仕事の利を求めるのではと怖くなってしまったのは確かだ。

「いや、責めてるんじゃない。君は逃げ出さずに、踏みとどまってくれた」
「あなたが隣にいてくれたから」

その言葉を言い終えるより早く、真矢は岳の胸の中にいた。

「真矢」

「もう大丈夫。迷わない」

ギュッと胸板に押しつけられているから、くぐもった声になってしまった。

「真矢、愛してる」
「私も……」

遠慮のない口づけが始まった。
岳は迷いなく真矢の唇を奪い、その柔らかさを確かめるようについばんでくる。

優しいふれあいは、いつしか熱をもっていく。

「真矢」
「何も言わないでください」

「きっと同じ気持ちだな、俺たち」

その言葉に、真矢は微笑んだ。

岳に手を引かれて、寝室に向かう。
その部屋に入るのは、初めてここに来た日以来のことだ。



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