虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます



これまで何度も親族の頼みだからと借金の肩代わりをしたり、偽物の美術品を掴まされたりしてきた人だ。
しっかり者の祖母が亡くなってから、都々木家では要注意人物となっている。
縁談まで口約束したのかと、祖父の評価は岳の中で地に堕ちた。

「仕事はともかく、そちらはお断りします」
「困ったね。お前にもそろそろ身を固めてほしいんだが」

岳が即答すると、父は苦笑した。

「つい先日、こんなメールが届いた」

父に促されて、岳はパソコン画面をのぞき込んだ。
目を通してみたが、現在カリブ海にいる祖父からのメールは一読しただけでは意味がわからない。
 
【対鶴楼の先代社長との約束だから、援助してやってくれ】
【鶴田家には岳の花嫁候補がいる。そちらもよろしく】

縁談の相手については、名前すら触れていない。祖父のことだから、岳のというより自分の好みで選んだのだろう。
『よろしく』とはどういう意味か理解できないし、思った以上にいいかげんな内容だった。

同じように画面を見ていた華怜も微妙な表情だ。岳と視線があうと、あきれるというより諦めろというように首を横に振っている。

「文面では、援助と書かれていますよ」

父は買収する気だから、すでに祖父の考えとは齟齬(そご)が生じている。

「買収する計画でかまわない。あちらは先代が亡くなってから、この一年でいよいよ行き詰まっているらしい。支援どころでは収まらないはずだ」
「わかりました。縁談は無視しても大丈夫ですか」

「相手の名すらわからないからなあ」

つまり縁談は、二の次だと父は暗に言っている。

「わかりました」



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