虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「ほかの方はよろしかったのですか?」
たしか四人での宿泊だったはずだが、参加しているのはひとりだけだ。
「スタッフは、ほかに用事があるので」
研修旅行という名目でしばらく滞在すると聞いているが、いったい岳はこの町で何をしようとしているのだろう。
なんとなく気になるが、仕事を優先しなくてはならない。真矢は観光客に英文のパンフレットを渡して説明を始めた。
観光客たちは古い町並みに興味がわいたらしく、築年数や、白い壁の材料についてなどの質問が絶えない。
それらが途切れたタイミングで、岳が真矢に話しかけてきた。
「さすがに歴史を感じる建物ばかりだね」
岳はゆっくりと町並みを眺めている。
建てられてからの年数はかなりのものだが、まだまだどっしりとしているし壁は塗りたてのような白さを保っている。
「この美しい景観を維持して後世に残すために、様々な決まりがあるんです」
岳はどうやって保存してきたのか知りたそうにしている。
「市の条例で建物は勝手に改修できませんし、色や形にも細かな規定があるんです」
「それでこの状態をずっと保っていけるわけだ」
真矢の説明を真剣な顔で聞いていた岳が、ハッと思いついたように表情を変えた。
「案内してもらえないかな?」
「は?」
「もっと詳しく町を見たくなったんだ」