虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます


経営企画部長として岳の仕事は、多岐にわたっている。グループ全体の経営戦略を立案するだけでなく、収益の向上を目指さなくてはいけない。
ホテルブランドを生かした食品などを手掛けているのもそのためだ。
帰国して最初に手掛けることにしたのは、シャンプーやボディソープなどのトイレタリー製品の開発だ。
パーティーには提携する大手化粧品メーカーの会長夫人を招待していたのだが、チョッと岳が離れた間に姿が見えなくなってしまった。

騒ぎにならないよう秘かに探していたところ、若い女性が婦人に付き添って現れた。
どうやら化粧室で体調を崩していたらしく、会長夫人はすっかり彼女に頼りきっていた。

彼女を見て、岳はすぐにあの女性だと気がついた。
仕事が終わってホッとしたのか雰囲気がずいぶん柔らかくなっている。
目を引くような美人ではないが、地味な紺のスーツを着ていても品のよさを感じさせる。

岳はすぐに会長夫人を特別室に案内して、休んでもらうことにした。
婦人は助けてくれたスタッフにとても感謝していて、どうしてもお礼を伝えてくれという。
名乗ることなく立ち去ったというので、すぐに彼女を探した。
業務用のエレベーターに乗る姿を見たベルボーイがいたので、岳は彼女の姿を求めて通用口に急いだ。

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