虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「買収計画は、しばらくオープンにできませんね。スタッフはどうなりますか」
「本社の経理部や経営企画部から厳選する予定だ。森川も連れて行くといい」
森川は岳の大学時代の先輩だ。仕事はできるし、物腰の柔らかさで人たらしの一面を持つ。
これまで何度も一緒に新しい企画に取り組んできた願ってもない相棒だ。
「彼がいてくれたら助かります」
「これはただの視察ではない。今後、国内にある老舗旅館をグループに入れていくかどうかの判断材料になる」
対鶴楼の先代と会長の約束だからというだけでなく、父は十年先まで見据えているようだ。
さすがに経営者としてやり手だなと岳はあらためて思った。
「うちのホテルに、老舗旅館のような味わいを加えてもいいですね」
なぜか華怜まで乗り気になってきた。
これまでとは違うテイストを求めているのか、新たなイメージがわいてきたようだ。
父が、岳に再び視線を向けてきた。
「岳、これがきっかけで大切なものが手に入るかもしれないよ」
祖父が仕組んだ縁談のことを言っているのだろうか。その含みを持った言い方に、岳は父からの「そろそろ結婚しろという」圧を感じた。