虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます

「ともかく、対鶴楼に泊まってみることにします」

都々木家では、新しい事業は自分自身の目で確かめるのが仕事の流儀だ。現地に飛んだり、交渉相手の人となりを確かめるのは大切なことだ。

「期待している」

父はこの仕事で、岳の後継ぎとしての力量をテストするのかもしれない。もし祖父の希望通り、結婚まで決めたら満足するだろう。
いつかは結婚して後継ぎを残す。それが都々木家に生まれた自分の役割だと、岳は納得している。

都々木家を背負う責任の重さを知っているからこそ、経営を学ぶためアメリカに留学して実力をつけてきた。
対鶴楼という老舗高級旅館をこの目で見て、なにか得るものがあれば将来への布石になるだろう。
だが、うまく買収できたとして、旅館として存続させるかどうかも考えなくてはいけない。問題は山積みだ。

「すべて岳に任せる」
「ありがとうございます」

「すべて」と言質をもらったところで、父に軽く頭を下げてから岳は社長室を出た。

岳は仕事を兼ねて世界の有名ホテルに宿泊したことがあるが、旅館に滞在したことはあまりない。
国内有数の老舗旅館だという対鶴楼に、なんだか興味がわいてきた。
誰もいないエレベーターの中で、岳は明日からどう動くか計画を練り始めた。






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