虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「私だけでなく、同じ考えを持つ人たちと相談していますから」
なるほどと言うように、岳が軽くうなずいた。
「じゃあ、明日も案内を頼む」
「わかりました」
岳たちは対鶴楼にとって上客だからか、真矢が勤務以外の時間に町の案内をすると伝えても支配人や女将の反対はとくになかった。
ただ陽依だけは「サボってばかり」と言って、自分が岳の案内をしたいのか真矢の仕事を増やそうとする。
妨害されても真矢はさっさと仕事を終わらせて、岳に【これからご案内します】とメッセージを送る。
岳たちの真意はわからないが、もし真矢のアイデアが対鶴楼の経営にプラスになると認めてもらえたら、明都ホテルグループからの援助を受けられるかもしれない。
かすかな望みを抱いていたからこそ、真矢は岳の案内を引き受けたし自分の夢も話した。
(明都ホテルグループで力を持つ人なら、対鶴楼を助けてくれるかもしれない)
明都ホテルであこがれていた、さっそうと仕事をしている岳の姿がよみがえってくる。
それに岳と同じ時間を過ごせるなんて、勤めていたころには想像もできなかったことだ。
たとえ短い時間でも言葉を交わせる喜び。それに経営の最前線にいる岳と仕事の話ができるなんて、ありえない幸運だとも思う。
東京を離れるのがいやで泣いてしまった自分はもういない。今は、考え方も行動も変わっている。
少しでも対鶴楼の経営に役立てばと、和真たちの協力も得てきた。
岳との再会が、すこしでも町の観光や対鶴楼を守るきっかけになればと真矢は願っていた。