虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます


「私がですか?」
「ああ。面白い企画だと思ったんだ。できるかな?」

「都々木部長にご満足いただけるかどうかわかりませんが」

真矢も無意識だろうに、岳がまるで上司のような答え方をしている。

「君にもきっとプラスになる話だ。受けてほしい」

真矢は少し考えていたが、引き受けてくれた。
なぜかとは追及してこないが、真矢なら明都ホテルグループに思惑があるだろうと気が付いているはずだ。
何の用事もなく、対鶴楼に泊まったりするはずはないのだから。

真矢は町の発展や対鶴楼の経営に自分なりの考えを持っているようだが、残念なことに対鶴楼ではそれを生かす立場にないようだ。
仲居の仕事と事務の仕事の両方をこなしているだけで手いっぱいだろう。
そのうえ企画書を頼むのは気が引けたが、ホテルと旅館の両方を知っている真矢にふさわしい仕事だ。

それにしても支配人の親戚というだけで、あそこまで働かされるだろうか。
岳の中で真矢に対する疑問は膨らんでいくばかりだ。

明都ホテルと対鶴楼の仲居とでは、給料や福利厚生など比べものにならないはずだ。
東京での仕事を辞めてまで、この町で働いているのはどうしてなのだろう。
真矢のアンバランスさが、どうしても岳の心に引っかかるのだった。







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