虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
翌日も、真矢と町を散策した。
また裏道を辿って、古民家の蔵を改築したカフェに入った。遠慮する真矢に、中の様子が見たいからと言って付き合ってもらったのだ。
案内された席に座って天井を見上げると、どっしりとした梁にまでセンスを感じさせる店だ。
ふたりだけでよく歩いたし会話したというのに、コーヒーを味わっているときにも、真矢との話は尽きない。
「もっとあちこち見て回りたいが、時間が足りないな」
わずか数日過ごしただけなのに、真矢とはまだまだ同じ時間を過ごしたいと思う。
だが近隣まで足を広げていたスタッフの調査もほぼ終わったから、そろそろ滞在を切り上げなくてはいけない。
別れがたい気がしていたら、真矢がチラリと店内にある古ぼけた柱時計に目をやっているのがわかった。
このあとも仕事があるのだろう。
「対鶴楼の庭に、見事なしだれ桜があるんです。よかったら、お花見の時期にいらしてください」
真矢は別れが近いと感じているのか、来年の話をする。
その言葉はうれしいが、桜の時期ではなく近いうちに正式に仕事として来ることになるだろう。