虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
真矢は岳の顔を見上げた。
この瞬間、ふたりの心が繋がったような気持ちがしたのは真矢だけだろうか。
目と目を合わせただけで互いの気持ちが伝わるとしたら、きっと今だ。次に何が起こるのか、未知の感情がわき上がる。
切ない思いで岳を見つめていたら、コンコンと強くドアを叩く音がした。
その音にハッと我にかえると、まるでキスでもするのかというように向き合って立っていたことに気がついた。
真矢は焦って一歩離れたが、それと同時に部屋のドアが開いて、さっきエレベーターですれ違ったはずの華怜が入ってきた。
「華怜」
入ってくるなり目を見開いて、真矢と岳を見比べている。
「華怜、こちらは鶴田真矢さん。華怜がうちの営業部にいるのは知っているね」
「はい。存じ上げています」
とってつけたように岳が紹介してくれたので、真矢も丁寧に礼をする。
「対鶴楼で働いております、鶴田真矢と申します」
「あなたが、例の」
「はい?」
華怜の「例の」という言葉はどういう意味かわからないが、なんだか値踏みするような視線を感じる。
それを遮るように、岳が真矢の前に立った。