虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「真矢さんを送っていくから、仕事の話しならあとでしよう」
「そんな。タクシーで帰りますので」
「泊まっているのはどこかな?」
明都ホテルのならいいのだが、今回は新郎新婦が用意してくれた宿だ。
「すみません。今夜は東京駅の近くのホテルなんです」
明都ホテルグループの御曹司と令嬢を前に、違うホテルに泊まっているとは話しにくいものだ。
「じゃあ、そこまで送るよ」
「いえ、大丈夫です」
「わざわざ来てもらったんだ。それくらいさせてほしい」
ふたりで堂々巡りのように話していたら、わざとらしくゴホンと咳払いされてしまった。
「私との話はいつでもいいから、お兄さんは送ってあげて」
その言葉に真矢は逆らえなかった。
「では、よろしくお願いします」
「ああ」
「真矢さん、会えてよかった。またね」
華怜から手を差し伸べられたので、握手までしてしまった。
「は、はい」
またねと言われても、真矢と華怜に接点はないはずだ。
華怜も対鶴楼の買収計画に加わっているのだろうかと、真矢は身を引き締める。
「そんなに警戒しないで」
真矢の心が伝わったのか、華怜はおかしそうにクスクス笑いだした。
細められた目元は岳そっくりだ。
「じゃあ、行こうか」
真矢は岳のあとに続いたが、ふたりのうしろ姿を華怜がじっと見ていることには気がついていなかった。