虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
高杉は自分の気持ちは伝えたと納得したのか、女将と言葉を交わしてから帰っていった。
真矢は通常の仕事に戻り、いつも通りの慌しい時間を過ごす。
その日の勤務が終わって真矢が帰ろうとしたら、支配人室まで呼ばれた。
部屋には叔父夫婦と真矢だけで、陽依はいない。
叔父は支配人のデスクに座ったままむっつりとしている。
「なにかご用でしょうか」
「いいお話なのよ、真矢」
叔母は機嫌がよさそうだ。いい話とは、おそらく真矢にとって悪い話だろうと身構えた。
「今日お会いした高杉社長、いい方でしょう?」
「初対面なので、よくわかりません」
真矢の素っ気ない返事を無視して叔母は話し続けた。
「あの方、奥様を亡くされて五年経つのだけど再婚相手を探してらして」
真矢の予感通り、悪い方向へ進んでいく。
すでに高杉から聞いている話だが、改めて叔母の口から聞かされると胃が痛くなってきた。
「それで、あなたを妻に望んでいらっしゃるの」
「はあ」
ますます叔母の声は甘ったるくなってくる。
「それだけじゃあないのよ。対鶴楼に出資してくださるんですって」
「対鶴楼にですか」
「そうなのよ」
つまり真矢を後妻に迎えたら、高杉建設が対鶴楼を支援するというのだ。