虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
真矢はそこまで高杉が言ったことが信じられない。真矢との結婚と資金援助の話がどうしてもかみ合わない。
「それよりあなた、私たちに黙っていたでしょ。この町を案内した男性が明都ホテルグループの御曹司だって」
「あれは」
相手も身元を隠したいと言っていたから話をあわせただけだ。
「いいわ。高杉さんと結婚するなら許してあげる」
「許す?」
叔母は真矢が泣いて謝るとでも思っているのだろうか。
「あなたが役にたつ時がきたのよ」
「役に立つって、どういうことですか」
「引き取ってから今日まで育ててあげたんだもの。この対鶴楼のために高杉社長に嫁いでちょうだい」
「そこまで対鶴楼の経営は行き詰まっているんですね」
真矢がはっきり口にすると、叔母の顔色が変わった。
「な、なに言ってるの⁉ そんなことあるわけないじゃない。ここは全国でも有名な旅館なのよ!」
真矢は何も知らないとでも思っていたのだろうが、事務や経理などいろいろさせられて気がつかないわけがない。
叔父をチラリと見たら、ブルブル震えながら両手を握りしめている。どうやら叔父は高杉の話が気に入らないようだ。
このところ叔父夫婦がこそこそと話していたのは、支援してくれる企業を探していたのだろう。
そこに岳が買収の話を持ち掛けてきた。
岳はまず買収案を提示して、危機感をあおったはずだ。それから支援に話を進めていく予定のはずだ。
そもそも叔父夫婦は明都ホテルグループから買収の話を真矢に隠しているし、様子を見ていたらふたりの意見は異なっている気がする。
おそらく買収案に焦った叔母が高杉建設と明都ホテルグループのどちらがいいか天秤にかけて、自分たちに経営権が残りそうな話に乗ったのだろう。