神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
やがて、乗り物が動きを止めた。

お。何処か知りませんけど、着きましたか。

「立て。降りろ」

冷たい声で、誰かが僕にそう指示した。

降りろと言われましても、僕、今何も見えないんですが。

おまけに口も塞がれているから、「これ外してくれないと、立ちたくても立てないんですけど!」と文句も言えない。

よたよたしていると、誰かが僕の腕を乱暴に引っ張り、無理矢理引きずり下ろした。

暴力反対。

そのまま、両脇に何者かがぴったりと張り付き、腕を引っ張られて無理矢理歩かされた。

一体何処に向かっているのか。

少なくとも、今逃亡するのは無理ですね。

せめて、この目隠しだけでも外してくれないだろうか…。

何やら、静かな建物の中を歩かされているような気がするのだが。

ここが、『アメノミコト』の本拠地なのだろうか?

だとしたら、ここに令月さん達がいる可能性も…。

「座れ」

どんっ、と誰かに突き飛ばされ、僕は硬い木の椅子に座らされた。

いたたた…捕虜に対する扱いが乱暴ですよ。

いや、そもそも僕、拉致されただけで、捕虜ではないんですけどね。

すると。

ぐいっと腕を引っ張られ、椅子の背もたれの後ろで両手首を硬く、縛られた。

更に、足首にもじゃらじゃらと重そうな、金属製の足枷を嵌められた。

更に更に、同じく金属製の首輪みたいなものを、ガチッ、と首に嵌められた。

それらの足枷や首輪から伸びる鎖の先には、重たい鉄球が繋がれていて。

何が何でも、絶対に逃亡は許さないという強い意志を感じる。

しかも、僕が座った直後に、ガチャンッ!と重い金属の錠が下ろされる音がした。

…はいはい、分かりましたよ。

逃げ出したりしませんから。そんなに徹底して拘束しなくても。

リアルで首輪に手錠、しかも目隠しだなんて…。全然萌えませんね。

夜にベッドでリリスとちょめちょめする時なら、むしろご褒美なんですが…。

僕が求めているのはこういうのではありません。

心の中で、深々と溜め息をついていると。

「ぷはっ…」

かろうじて、口に押し込まれていた布切れだけは、外してくれた。

あぁ。これで呼吸が楽になった。

すぅー、はぁー、と深呼吸を繰り返す。

死なないからって、でも息が苦しいのは嫌なんですからね。僕だって。

…それで。

「…目隠しは?取ってくれないんですか」

「黙れ」

首元に、冷たいナイフの切っ先が当てられるのが分かった。

先程、僕の口から布切れを取り払った誰かが、僕を脅しにかかった。

勝手に喋るな、って?そういうことですか。

そっちがその気なら。

「どうぞどうぞ、ご勝手に」

僕は不死身ですよ?

喉元にナイフを当てられたくらいで怯えたりしませんよ。

どうぞ、切りたければ遠慮なく切ってください。

痛くも痒くも…いや、痛いのは痛いですけど…でも、それだけですよ。

「僕に恐れるものがないってこと、あなた方もご存知なのでは?」

「…」

誰も答えない。

無視はやめて欲しいですね。

…すると。

僕の真正面に、誰かの気配を感じた。

今、僕の喉にナイフを向けている人とは、また別の誰かだ。

「下がってくれ」

その人が、ナイフを向けている人に指示をした。

「しかし…」

「良いから。ここは僕が」

「…分かりました」

非常に、不本意そうな口振りではあったが。

ナイフが取り払われ、その人が立ち去るような足音がした。

「手荒な真似をして、すみませんでした」

僕にナイフを向けていたさっきの人とは違う。

柔らかく、親しみやすい口調で。

僕の真正面に座った青年が、そう話しかけてきた。
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