神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
フユリ様との謁見を終えた後。

俺とシルナはイーニシュフェルト魔導学院に戻り、事の次第をみんなに話したところ…。

「そうですか。じゃ、行って話をつけてきなさい」

イレースは、きっぱりとそう言った。

…。

…驚きも憤慨も質問も、何も無し。

「…別に驚いて欲しかった訳じゃないけどさ。もうちょっと…こう…ないのか?」

「何です。なんて言って欲しいんですか」

「いや、別に…」

そんなジロッと睨まれてしまったら、こちらとしてはもう何も言えない。

まさか、ここまで淡々とした返事だとは。

「そ、そんな…。学院長先生と羽久さんがキルディリア魔王国に…。それって大丈夫なの…?」

青ざめて心配してくれるなら、天音くやいのものだよ。

ありがとうな、天音。お前は良い奴だよ。

「まぁ、これまでも色々ありましたからね。免疫が出来ちゃって、これくらいじゃもう驚かないって言うか…」

「ナジュ…」

ナジュも、淡白な反応だったし。

「なんだ。ルーデュニア聖王国も宣戦布告されたのかと思った」

「キルディリア魔王国の王様を暗殺してくれ、って依頼とか来ないかなーって期待してたのになー」

元暗殺者組なんて、この反応。

んなワケないだろ。…と言いたいところだが…あながち有り得なくもないのが恐ろしい。

「暗殺の依頼なら、いつでも俺達に頼んでよ」

「相手が誰だろうと、何処でもやり遂げてみせるよ」

「…それは頼もしいことで」

絶対頼まないから。大人しくしといてくれ。

「…もし二人だけで不安なら、僕も一緒に行こうか?」

と、申し出たのはマシュリだった。

「猫の姿に『変化』して行けば、バレないと思うけど…」

「いや…。…気持ちは有り難いが、お前は残っててくれ」

マシュリが頼りない、という訳じゃない。

もし万が一のことが起きた時、マシュリを巻き込みたくない。

それに、マシュリがいなくなったら、また生徒達が心配するだろ。

いろりちゃんがいない、って。

「お前は、イーニシュフェルト魔導学院にいてくれなきゃ困るんだよ」

「…良いの?本当に」

「あぁ。…大丈夫だ」

何処に行ったとしても、多分あの…冥界遠征の時よりは安全だよ。

それにな。キルディリア魔王国に、何が待ち受けていようと…シルナが一緒なら大丈夫。

俺はそう思えるのだ。…きっと、シルナにとってもそうであって欲しい。

「ウチのパンダ学院長と話をして、それで納得して引き下がるのなら、それでよろしい」

「納得してくれれば良いんだけど…」

「放っておきなさい。厄介事に自ら首を突っ込む必要はありません」

…イレースはさっぱりしてんなぁ。

キルディリアの女王様も、イレースのように物分かりが良ければ良いのだが…。
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